彼氏は色々知っている
寝台の上に正座したまま、向かい合っている。全裸で。
彼らしくもなく、やや気まずそうなミスルンが、俯いたまま呟く。視線の先は、カブルーの股間だった。
「こんなに凶悪な大きさだとは、思っていなかった」
「凶悪って、そんな人聞きの悪い……。平均ですよ」
カブルーは居心地悪くなんとなく尻をもぞつかせて、おさまりのよい場所を探す。剥き出しのままの股間が間抜けだ。既に半分ほど勃ちあがってしまっているのが、なおさら。
ミスルンは無言のまま、自分の指で輪をつくるようにしてカブルーのものの直径を再現しようとしている。実年齢としても、トールマンの年齢に換算したとしても、ミスルンの方が年上なのは重々承知の上で、カブルーはつい「やめなさい」と、年長者の口調になって制した。
向き合うミスルンの両脚の付け根についている男性器は、彼の体躯から想像される通りに慎ましい大きさである。カブルーだって己のサイズに特別の自信があるわけではないが、自分のものを見慣れたミスルンからすれば、暴力的なサイズに思われることは想像に難くない。
「入るだろうか」
「は、入るって……」
「違うのか? 私はてっきり、お前の陰茎を私の──」
「違わない! 違わないです!」
あまりにも明け透けな物言いに、カブルーは慌てて遮り、続ける。
「いいんですよ、無理しなくても。機会ならいつでもあるわけですし……ほら、ミスルンさんもまだ暫くはメリニに残るんですよね?」
エルフが言うところの「暫く」が、トールマンにとっては「かなりの長期間」であることを理解しながら、カブルーは努めて明るく取り繕った。なんとなく通常の状態に戻りつつある男根に、内心でほっとしながら。いくらなんでも下半身に血流を滾らせながら「無理しなくてもいい」だなんて口にするのは馬鹿げている。
「うん」
「ね。今日はミスルンさんも俺と同じ気持ちだって分かっただけでも、充分に嬉しいですよ」
「……」
「それにしても『陰茎』はないでしょう。医学書を読んでるんじゃないんだから」
「では、なんと呼べばいい?」
真っ直ぐに問われて、言葉に詰まる。いくら幼少期に養母から可愛がられて育ったとはいえ、カブルーも青年期を迎えた男性である。知らないわけではないが、ミスルンに言わせるとなると、多少は選ばなければなるまい。
頭の中をさまざまな呼称が飛び交う。多少文学的なものから、子供しか使わないようなものまで。
「え〜……っと……」
「質問を変えよう。お前は、私にそれをどう呼ばせたい?」
にや、とミスルンの左目が僅かに細められて、下瞼がいたずらっぽい曲線を描く。
「……もしかして、俺のこと揶揄ってません?」
「いや。ただ、鎮めてやりたいとは思う。入れられなくても、やりようは色々ある」
「色々……」
思わず復唱し、カブルーは口の中に溜まった唾液を嚥下した。どこを見ればいいのか分からない。ミスルンの細い指と、唇から目が離せなかった。
「それに、お前が私でも興奮できると分かって、私も嬉しい」
ミスルンは目を伏せる。睫毛が作る影が白い頬に落ちている。
「口? 手? それとも他のところがいいか?」
こんな時、相手と自分の年齢差が悔しくなる。若い己の肉体が疎ましい。もし自分が壮年の男性だったら、こんな誘いに簡単に燃え上がることはなかっただろうに。
──やや逡巡したのち、カブルーは絞り出すようにして応えた。
「く、口で……お願いします……!」
「分かった」
あっさりとミスルンは肯い、のそのそと寝台を降りた。床の上へ膝立ちになり、カブルーを見上げてくる。
「こちらに脚を下ろせ」
言われるがままにカブルーがベッドの端に腰掛けて床に踵をつけると、足元に跪いたミスルンが太腿に手を置く。真っ直ぐにその顔が見られず、カブルーは自分の皮膚とはずいぶん色の異なるミスルンの白い手を見つめた。
股座にミスルンの顔が近づく。髪と同じ色をしたカブルーの下生えに、ミスルンの吐息がかかってくすぐったい。カブルーもミスルンも大きく括れば成人男性だし、合意形成も済んだ上での行為とはいえ、トールマンからすれば華奢で身長も低いミスルンに口淫をさせるのは想像していた以上に背徳感がある。
ミスルンが、カブルーのものに薄い舌を伸ばす。濡れた柔らかい感触が敏感な部分に触れて、カブルーは小さく呻いた。
括れたところを確かめるように何度も硬くした舌で擽られて、先端から滲みはじめた透明な液体を、軽いキスで吸い上げられる。
「っ、う……!」
カブルーのものは恋人から軽くキスされた程度で血管が浮き出んばかりに猛っている。大きく口を開いたミスルンが、カブルーの怒張を口いっぱいに咥え込んだ。
ミスルンは喉の奥まで咥えてくれているようだが、エルフの口内はトールマンには狭すぎた。収まりきらなかった数センチの部分にさえミスルンは健気にも指を這わせ、根本に近い部分を撫でて刺激を与えてくる。
自分からしてほしいと言った手前、呆気なく射精するわけにはいかない。
下半身に力が入って脚を緊張させるカブルーを宥めるように、ミスルンがカブルーの鼠蹊部を摩った。
「──っ!」
シーツをきつく握りしめたカブルーの手に、一回りほど小さな手が重ねられた。そのまま、ぐい、と掴まれる。
「……え?」
ミスルンの手に引かれるままになっていると、彼の後頭部に導かれた。頭を撫でてほしいってことかもしれない。ミスルンの髪は、カブルーの髪とは全く質感を異にする。同じ人間だとは思えないほど柔らかく、一本一本が絹糸のようだ。間違っても指のささくれなどに引っ掛けてしまわないよう注意深く指をさしいれて、小さく形のよい後頭部を撫でる。
カブルーは最大級の慈愛を込めたつもりだったが、どうやら恋人の意図するところからはかけ離れていたらしい。再びミスルンの手が重ねられ、ミスルンの頭をカブルーの股間に押し付けるように力を込められる。
口内の行き止まりだと思っていた喉奥の狭いところをカブルーの亀頭がさらに奥深くまで飲み込まれる。反射でミスルンの喉が不規則に蠕動する。裏側にある筋張ったところをミスルンの舌がくすぐり、きゅうきゅうと口内と喉が締め付けてくる。
興奮。愛おしさ。支配欲。様々な感情が綯い交ぜになる。生理的な反応で涙をたたえたミスルンの瞳と視線が交錯した瞬間、堪えようのない快感がカブルーを襲い──耐えきれず、カブルーはミスルンの喉の奥に迸りを叩きつけた。
──目の前が明滅している。後ろに倒れ込んだカブルーは、瞬きするたびに焦点が合わなくなる感覚に溺れそうになりながら、荒い呼吸を整える。数十秒かけて徐々に冷静さを取り戻し、身を起こす。
「ミスルンさん、ちゃんとぺっしました⁉︎」
「してない。嫌ではなかったし」
ミスルンは手の甲で唇を拭いながら淡々と応じる。精液を飲みたくない欲がないことを心配するべきか、はたまた精液を飲みたい欲があると捉えて喜ぶべきか。カブルーは一瞬悩みかけて、やめた。時間が惜しい。なにせ、これからミスルンにお返しをしなければならないのだから。
彼らしくもなく、やや気まずそうなミスルンが、俯いたまま呟く。視線の先は、カブルーの股間だった。
「こんなに凶悪な大きさだとは、思っていなかった」
「凶悪って、そんな人聞きの悪い……。平均ですよ」
カブルーは居心地悪くなんとなく尻をもぞつかせて、おさまりのよい場所を探す。剥き出しのままの股間が間抜けだ。既に半分ほど勃ちあがってしまっているのが、なおさら。
ミスルンは無言のまま、自分の指で輪をつくるようにしてカブルーのものの直径を再現しようとしている。実年齢としても、トールマンの年齢に換算したとしても、ミスルンの方が年上なのは重々承知の上で、カブルーはつい「やめなさい」と、年長者の口調になって制した。
向き合うミスルンの両脚の付け根についている男性器は、彼の体躯から想像される通りに慎ましい大きさである。カブルーだって己のサイズに特別の自信があるわけではないが、自分のものを見慣れたミスルンからすれば、暴力的なサイズに思われることは想像に難くない。
「入るだろうか」
「は、入るって……」
「違うのか? 私はてっきり、お前の陰茎を私の──」
「違わない! 違わないです!」
あまりにも明け透けな物言いに、カブルーは慌てて遮り、続ける。
「いいんですよ、無理しなくても。機会ならいつでもあるわけですし……ほら、ミスルンさんもまだ暫くはメリニに残るんですよね?」
エルフが言うところの「暫く」が、トールマンにとっては「かなりの長期間」であることを理解しながら、カブルーは努めて明るく取り繕った。なんとなく通常の状態に戻りつつある男根に、内心でほっとしながら。いくらなんでも下半身に血流を滾らせながら「無理しなくてもいい」だなんて口にするのは馬鹿げている。
「うん」
「ね。今日はミスルンさんも俺と同じ気持ちだって分かっただけでも、充分に嬉しいですよ」
「……」
「それにしても『陰茎』はないでしょう。医学書を読んでるんじゃないんだから」
「では、なんと呼べばいい?」
真っ直ぐに問われて、言葉に詰まる。いくら幼少期に養母から可愛がられて育ったとはいえ、カブルーも青年期を迎えた男性である。知らないわけではないが、ミスルンに言わせるとなると、多少は選ばなければなるまい。
頭の中をさまざまな呼称が飛び交う。多少文学的なものから、子供しか使わないようなものまで。
「え〜……っと……」
「質問を変えよう。お前は、私にそれをどう呼ばせたい?」
にや、とミスルンの左目が僅かに細められて、下瞼がいたずらっぽい曲線を描く。
「……もしかして、俺のこと揶揄ってません?」
「いや。ただ、鎮めてやりたいとは思う。入れられなくても、やりようは色々ある」
「色々……」
思わず復唱し、カブルーは口の中に溜まった唾液を嚥下した。どこを見ればいいのか分からない。ミスルンの細い指と、唇から目が離せなかった。
「それに、お前が私でも興奮できると分かって、私も嬉しい」
ミスルンは目を伏せる。睫毛が作る影が白い頬に落ちている。
「口? 手? それとも他のところがいいか?」
こんな時、相手と自分の年齢差が悔しくなる。若い己の肉体が疎ましい。もし自分が壮年の男性だったら、こんな誘いに簡単に燃え上がることはなかっただろうに。
──やや逡巡したのち、カブルーは絞り出すようにして応えた。
「く、口で……お願いします……!」
「分かった」
あっさりとミスルンは肯い、のそのそと寝台を降りた。床の上へ膝立ちになり、カブルーを見上げてくる。
「こちらに脚を下ろせ」
言われるがままにカブルーがベッドの端に腰掛けて床に踵をつけると、足元に跪いたミスルンが太腿に手を置く。真っ直ぐにその顔が見られず、カブルーは自分の皮膚とはずいぶん色の異なるミスルンの白い手を見つめた。
股座にミスルンの顔が近づく。髪と同じ色をしたカブルーの下生えに、ミスルンの吐息がかかってくすぐったい。カブルーもミスルンも大きく括れば成人男性だし、合意形成も済んだ上での行為とはいえ、トールマンからすれば華奢で身長も低いミスルンに口淫をさせるのは想像していた以上に背徳感がある。
ミスルンが、カブルーのものに薄い舌を伸ばす。濡れた柔らかい感触が敏感な部分に触れて、カブルーは小さく呻いた。
括れたところを確かめるように何度も硬くした舌で擽られて、先端から滲みはじめた透明な液体を、軽いキスで吸い上げられる。
「っ、う……!」
カブルーのものは恋人から軽くキスされた程度で血管が浮き出んばかりに猛っている。大きく口を開いたミスルンが、カブルーの怒張を口いっぱいに咥え込んだ。
ミスルンは喉の奥まで咥えてくれているようだが、エルフの口内はトールマンには狭すぎた。収まりきらなかった数センチの部分にさえミスルンは健気にも指を這わせ、根本に近い部分を撫でて刺激を与えてくる。
自分からしてほしいと言った手前、呆気なく射精するわけにはいかない。
下半身に力が入って脚を緊張させるカブルーを宥めるように、ミスルンがカブルーの鼠蹊部を摩った。
「──っ!」
シーツをきつく握りしめたカブルーの手に、一回りほど小さな手が重ねられた。そのまま、ぐい、と掴まれる。
「……え?」
ミスルンの手に引かれるままになっていると、彼の後頭部に導かれた。頭を撫でてほしいってことかもしれない。ミスルンの髪は、カブルーの髪とは全く質感を異にする。同じ人間だとは思えないほど柔らかく、一本一本が絹糸のようだ。間違っても指のささくれなどに引っ掛けてしまわないよう注意深く指をさしいれて、小さく形のよい後頭部を撫でる。
カブルーは最大級の慈愛を込めたつもりだったが、どうやら恋人の意図するところからはかけ離れていたらしい。再びミスルンの手が重ねられ、ミスルンの頭をカブルーの股間に押し付けるように力を込められる。
口内の行き止まりだと思っていた喉奥の狭いところをカブルーの亀頭がさらに奥深くまで飲み込まれる。反射でミスルンの喉が不規則に蠕動する。裏側にある筋張ったところをミスルンの舌がくすぐり、きゅうきゅうと口内と喉が締め付けてくる。
興奮。愛おしさ。支配欲。様々な感情が綯い交ぜになる。生理的な反応で涙をたたえたミスルンの瞳と視線が交錯した瞬間、堪えようのない快感がカブルーを襲い──耐えきれず、カブルーはミスルンの喉の奥に迸りを叩きつけた。
──目の前が明滅している。後ろに倒れ込んだカブルーは、瞬きするたびに焦点が合わなくなる感覚に溺れそうになりながら、荒い呼吸を整える。数十秒かけて徐々に冷静さを取り戻し、身を起こす。
「ミスルンさん、ちゃんとぺっしました⁉︎」
「してない。嫌ではなかったし」
ミスルンは手の甲で唇を拭いながら淡々と応じる。精液を飲みたくない欲がないことを心配するべきか、はたまた精液を飲みたい欲があると捉えて喜ぶべきか。カブルーは一瞬悩みかけて、やめた。時間が惜しい。なにせ、これからミスルンにお返しをしなければならないのだから。
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