准宝石の夜に
白磁の肌に、柔らかく波打つ銀色の髪。高い鼻梁に、時々手入れを怠って乾燥しているが、それでも形のよい唇──中性的に見える種族であることを差し引いても、ミスルンの容姿は整っている、とカブルーは思う。もちろん、見目のよさだけに惹かれたわけではないが、敢えて言葉を選ばずに言うと、ミスルンの笑顔は、刺さった。
(っていうか、あんな表情を見せられて恋に落ちない方が難しいだろ!)
誰にするでもなく頭の中で言い訳しながら、カブルーはミスルンの横顔を盗み見る。何を考えているのか読み取れないミスルンの深い色をした瞳は、ぼんやりと窓の外を眺めている。
振り向いて、こちらに笑いかけてくれたらいいのに、と思う。
脳裏にミスルンの笑顔が焼きついて離れない。まずいことに、日を追うごとに美化されていっているような気さえする。無表情なミスルンが見せる初めての笑みだったとはいえ、あんな花がほころぶような笑顔だっただろうか。
あれ以来、ミスルンが特別に表情豊かになったというわけではない。けれど、時折微笑むように唇の端を持ち上げたり、優しげに目を細めたりするようになった。カブルーの巻き毛を指に絡めて弄んだり、後ろから抱きしめれば体重を預けてくれたりもする。
「なんだ?」
カブルーの熱視線が伝わったのか、ミスルンが振り返る。
「恋人を見つめるのに、理由が必要ですか?」
後ろから体を密着させて、そう拗ねた声を出してやる。これは彼とこういう関係になってから知ったことだが、ミスルンは意外とカブルーに甘えられるのが好きのようだ。カブルーが年齢よりもわざと幼い態度をとってみせると、表情がほんのわずかに緩む。そうと分かればそれを利用するのに躊躇はしない。
カブルーの腕の中にすっぽりと収まってしまう華奢な体躯が、見た目の通りには弱々しくないことを知っている。黙っていれば可愛らしいとさえ形容できそうな容姿なのに、一度口をひらけば舌鋒は鋭く、決して可愛らしくなんてないことも。
「理由は要らないが、聞きたいと言ったらどうする?」
いたずらっぽく唇をつりあげて、ミスルン。この種の駆け引きめいたやりとりは、カブルーの好みだ。
「触りたいなって思ってました。それから、キスしてくれないかなって」
カブルーは素直にそう囁いた。恋人の望みを叶えることこそ男の本懐というやつだ。
そしてそれはきっと、ミスルンにとっても同じらしかった。
(っていうか、あんな表情を見せられて恋に落ちない方が難しいだろ!)
誰にするでもなく頭の中で言い訳しながら、カブルーはミスルンの横顔を盗み見る。何を考えているのか読み取れないミスルンの深い色をした瞳は、ぼんやりと窓の外を眺めている。
振り向いて、こちらに笑いかけてくれたらいいのに、と思う。
脳裏にミスルンの笑顔が焼きついて離れない。まずいことに、日を追うごとに美化されていっているような気さえする。無表情なミスルンが見せる初めての笑みだったとはいえ、あんな花がほころぶような笑顔だっただろうか。
あれ以来、ミスルンが特別に表情豊かになったというわけではない。けれど、時折微笑むように唇の端を持ち上げたり、優しげに目を細めたりするようになった。カブルーの巻き毛を指に絡めて弄んだり、後ろから抱きしめれば体重を預けてくれたりもする。
「なんだ?」
カブルーの熱視線が伝わったのか、ミスルンが振り返る。
「恋人を見つめるのに、理由が必要ですか?」
後ろから体を密着させて、そう拗ねた声を出してやる。これは彼とこういう関係になってから知ったことだが、ミスルンは意外とカブルーに甘えられるのが好きのようだ。カブルーが年齢よりもわざと幼い態度をとってみせると、表情がほんのわずかに緩む。そうと分かればそれを利用するのに躊躇はしない。
カブルーの腕の中にすっぽりと収まってしまう華奢な体躯が、見た目の通りには弱々しくないことを知っている。黙っていれば可愛らしいとさえ形容できそうな容姿なのに、一度口をひらけば舌鋒は鋭く、決して可愛らしくなんてないことも。
「理由は要らないが、聞きたいと言ったらどうする?」
いたずらっぽく唇をつりあげて、ミスルン。この種の駆け引きめいたやりとりは、カブルーの好みだ。
「触りたいなって思ってました。それから、キスしてくれないかなって」
カブルーは素直にそう囁いた。恋人の望みを叶えることこそ男の本懐というやつだ。
そしてそれはきっと、ミスルンにとっても同じらしかった。
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